うらしま外伝
 
〜招かれざる珍客〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<4>
 
 セフィロス
 

 

 

  

 

コスタ・デル・ソルの朝は早い。

 真夏の時期は過ぎたのに、夜明けと共にさんさんと朝日がカーテンを透かして侵入してくる。

 いつもなら、八時前にはシャワーを済ませるのだが、昨日の今日でさすがに疲れていたのだろう。

 オレが目覚めたのは昼近くであった。

 遠慮なく大あくびをかまし、シャワーを浴びる。やや熱めの湯を頭から被ると、すっきりと目が覚めてくる。オレの部屋はいわゆるゲストルームになっているので、やや小さめではあるが、続きの部屋にサニタリールームが併設されているのだ。

 

「おはよ、ゆっくりだったね。洗濯もう済んじゃったから。他になにかあるんなら自分でして頂戴」

「お、おはよう、セフィロス。そ、その、具合は大丈夫だろうか? もしよければ食事の仕度ができているが……ああ、それよりも先に何か飲み物を……」

 上がヤズーで下がヴィンセントだ。

 誰が見ても美人タイプのふたりだが、性格は正反対。もちろん、オレはオドオドびくびくのヴィンセントのほうを気に入っている。

「……メシ。食う」

 ぼそりとつぶやき席に座る。

 現代っ子のクラウドは朝っぱらから、居間でTVゲームだ。……ああ、クラウドが居るということは今日は休日か…… ここのところ曜日の感覚がなくなっている。

「どうしたの、ボケッとして、セフィロス」

 ツケツケというのはヤズーだ。

「別に……。今日が何曜か思い出していただけだ。クラウドのクソガキが居たんでな」

「ああ、そりゃ曜日の感覚もなくなるよね。『無職』だもんねェ」

「ヤ、ヤズー……そ、そんな言い方……」

「ヴィンセントみたいに家事が出来るってわけじゃないし。あ、オレはおヨメに行くまで家事手伝いだからァ」

 いけしゃあしゃあと宣うイロケムシを鼻で笑う。

「ケッ、なーにがヨメだ。おまえのような腹黒いヤツをもらってくれる物好きがいるか!ボケ!」

「ふ、ふたりともよさないか…… ヤ、ヤズー、私のわがままで、セフィロスには無理やり家に居てもらっているのだから……だから……そんな……」

「んもう!相変わらず人が好いんだから、ヴィンセントってば!」

「フン、貴様に比べりゃ誰でも『人が好い』になっちまうだろ。あー、あほくさ」

 並べられた料理を咀嚼しつつ、オレは文句を言い返した。

「セフィロス、飲み物、何! コーヒー?紅茶?カフェオレ!?」

「和食にカフェオレを飲むか、ボケナス!」

「兄さんは、ミロがぶがぶ飲んでたよ?」

「伸び悩みのチョコボ野郎と一緒にするな!おい、茶ッ!」

「ヤ、ヤズー、あ、後は私がするから、何ならおまえもラグナさんたちと……」

 ヴィンセントがそこまで言いかけたときであった。

 

 

 

 

 

 

 文字にすると

『ぎゃはははは!』だろうか。それともマンガチックに『ワイワイガヤガヤ!』がよかろうか。

 まぁ、なにはともあれ、穏やかなブレックファーストには似つかわしくない喧噪が庭先に乱入してきた。

 ガラーッ!と部屋を揺るがす物音を発して、ガラス扉が開く。

「ヴィンセント、ヴィンセント! ねぇねぇ、見てみて!これ、僕、獲ったの!」

「なんだよ、カダージュがとったのって、そっちのちっこいのだろ! ねぇねぇ、ヤズー、ヴィンセント!これお昼のおかずにどうかなッ!」

「たっだいま〜っ!皆の衆!いやぁ、大漁、大漁!!」

 まるで怒鳴り合うような大声でドアから身体をつっこんでくる三人組。

 もちろん、家のチビ、カダージュとデカブツ、ロッズ。そして招かざる珍客のラグナだ。見れば三人とも海水パンツに獲り網、勇ましげに腰には短剣まで挿してある。

 信じがたいコトに、我が家の精神年齢年少組と同じく年少タイプのラグナは、たいそう気が合ったらしい。あっという間に仲良くなり、どうやら朝っぱらから海に繰り出していたようだ。

「ヴィンセント、ヴィンセント! ねぇねぇ、見てってばッ!」

「ヤズーヤズー!これって食べれるよね!! 焼いたら美味しいよね!」

「あ、こっちのアワビはラグナさんが獲ったんだからな!スゴイだろ〜」

 ……『ラグナさん』じゃねーだろ。おめーは40男だろうが、気持ち悪ィんだよ、クソジジイ。

「ああ、皆、そんなびしょ濡れの姿で……」

 ヴィンセントがおろおろとタオルを手に三人に駆け寄る。奴らは濡れ鼠なので、室内に入れないのだ。

「きちんと拭いてこないと風邪をひいてしまうだろう? ラグナさんも……貴方は大切な身体なのだから」

 困惑した風に、見た目は年長の男に苦言を呈するヴィンセント。

「えー、平気だよ。コスタ・デル・ソルってすっごく暑いもん」

 ラグナがヘラヘラ笑いながらそう応じる。

 ガキ共も意気投合し、ねーッ!っとばかりに三人で声を合わせた。

「おやおやァ、ずいぶん獲ってきたねェ。今日のランチはシーフードで決まりかなァ」

 にぎやかな声を聞きつけてきたのだろう。

 キッチンに引っ込んでいたイロケムシが、エプロンで手を拭いながらやってきた。

 当てつけがましく、皮を剥いたフルーツをオレの目の前にドンと置く。態度は悪いがやることはやるというスタンスのヤツなのだ。

「へー、美味そう!サザエは壺焼きがいいな!」

 クラウドのガキが嬉しそうに言う。昔は食べられなかったくせに。

「ねぇ、ヴィンセント。ムロアジは刺身がいいかなァ? それとも寿司にしようか?」

「そうだな。干物にしても美味いが……せっかく新鮮なんだから、刺身に捌こうか」

「オッケー。あ、じゃあ、庭にバーベキューの用意しよ! 貝はそのまま焼いちゃったほうが手間も掛からないし、美味しいんじゃないかな」

 オレ様を置いてけぼりに、騒々しい連中は皆総出で庭にバーベキューの準備をし始める。どこの穴場を見つけてきたのか、三人はずいぶんとたくさんのアワビやら何やらの貝類と、ヴィンセントに渡した鯵などを獲ってきたらしかった。

「カダージュ、ロッズ、部屋でシャワーを浴びて着替えてきなさい。ラグナさんも浴室を使って下さい」

 魚を運びながらヴィンセントが声を掛ける。

 野生じみた三人組は、「えー」とか「面倒!」などとブツブツ言っていったが、ヴィンセントの言いつけに背くつもりはないらしく、素直に身体を拭き、風呂場に直行した。ラグナが誘っていたから、きっと一番大きな風呂に三人して入るつもりなのだろう。

 ……何なんだ、この連帯感は。