うらしま外伝
 
〜招かれざる珍客〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

「ウ〜ウ〜ウ〜 大雨洪水注意報!大雨洪水注意報!落雷を伴い、英雄ハリケーンが迫っております!」

「ウ〜ウ〜ウ〜 大統領他居住者一同、速やかに自室に避難して下さい!」

「ウ〜ウ〜、繰り返します!緊急注意報発信、緊急注意報発信!」

 おのれ、クソガキども〜ッ!不愉快極まりない!  クラウドのボケナスも年下のガキと一緒になって走り回るな!

 いや、誰よりむかつくのは、おちゃらけラグナそいつ自身だ。

「おいッ! ラグナ!」

 怒り心頭に発したオレは、玄関扉を蹴り開けるなり、罪人の名を呼んだ。イロケムシが不平そうに『ドアが壊れちゃうでしょ』とつぶやくが黙殺する。

「ぎゃあぁぁぁぁ! ごめん、ごめんなさい、セフィ! 置いてけぼりにされて寂しかったの! 寂しかっただけなんだよぉぉぉ〜」

 そこは安全圏だといいたいのか、身長はあるが横幅のまるでないヴィンセントの後ろに、野郎はこそこそと逃げ込んだ。

「てめェ、ふざけやがって!! 出てこいッ」

「あ、あの、セフィロス、お、おかえり。そ、その……あの……」

「どけ、ヴィンセント!」

「ヴィンセント、助けて〜!」

 あろうことか、変態40ジジイは、背後からヴィンセントに覆い被さるように抱きついた。ヴィンセントが声にならない悲鳴を上げるがおかまいなしだ。

「この野郎、どういうつもりだ!貴様は何かオレに恨みでもあるのかッ!?」

「違うよ〜!そんなつもりじゃなかったんだよぉぉぉぉ」

「てめェのおかげで、これからって時に……」

 ヴィンセントを目の前にしながらも、怒りのあまり中断された情事の鬱憤をぶつけてやる。

「ごめんってば〜、怖い顔しないで〜」

 ヴィンセントの後ろから顔だけ出して、おどおどと謝罪するラグナ。

 するとオレの剣幕に姿を隠していたクラウドとカダージュが、したり顔で様子を伺いにやってきた。

「まぁ、奥様お聞きになりまして?これだから最近の若い方は……」

「そうですわねェ〜、昼間からまぁ、お盛んですこと!ねぇ、奥様」

「ホントですわ、奥様、いやらしい!」

「まったくですわね、奥様、いやだわァ」

「ねぇっ!」

 

「よ、よしなさい、クラウド、カダージュ……」

 ヴィンセントが、作り声で奥様ごっこをするガキどもを叱る。

 最近、我が家では奥様ごっこが流行っている。ったくガキはすぐに面白がって新しい遊びを見つけるのだ。これを当てつけがましく繰り広げるガキふたり。臆病者のロッズは部屋に引っ込んだか?

 いずれにせよ、むかつくヤロウどもだ!

「あ、あの……ラグナさん、う、腕を……」

 困惑しきった様子で、ヴィンセントが背後のラグナに

促すが、ヤツはひっつき虫のように細い身体にとりついたままだった。

「だってヴィンセントから離れたら、セフィにぶん殴られるもん!」

「だ、大丈夫だ、冷静になれば……」

「だって今、冷静じゃないじゃん!」

「いいかげんにしろ、この野郎!ヴィンセントから離れんか!」

「ぎゃー!」

「セ、セフィロス……暴力は…… か、彼にも悪気はなかったのだし……」

 胸ぐら掴んだオレの腕に取りすがるヴィンセント。コイツ相手だと、力づくで放り出すことができなくなる。

「放せ、ヴィンセント!」

「で、でも……! もういいではないか、セフィロス。わ、私も……私だって、今日は君に家に居て欲しかったし……こうして帰ってきてくれて、嬉しく思っているのだから……」

 ヴィンセントの必死のセリフに気を良くしながらも、オレは表面的には冷たく取り繕った。そしてさも忌々しげに大統領とかいう男のツラを睨み付ける。

「それとこれとは話が別だろうが、ヴィンセント。いいか、この野郎は昨夜に引き続き、今日に至るまで、このオレ様に迷惑を掛け続けていやがるんだぞ!?」

「だ、だが、故意にしたことではなかろう!? ラグナさんも私も、休みの日くらいは君に側に居て欲しいんだ。クラウドも仕事がない日だし、唯一朝から家族が揃う日ではないか!」

「家族家族っておまえなぁ! 別にオレたちに血のつながりなんざ無いんだぞ!? 一時は互いに命の取り合いをした仲だというのに、ったく貴様ときた日には、お人好しも大概にしておけ!」

「セ、セフィロス…… そんな……私は……私にとっては……君は普通の家族以上に……」

 当事者のラグナを置き去りに、ひとりで涙ぐむヴィンセント。支配人と同じツラとはいえ、この繊細すぎる神経はなんとかならんものだろうか。

 

 

 

 

 

 

「コルアァァァァ! ヴィンセント、泣かせるなーっ!」

 助走をつけて真空膝跳び蹴りを繰り出してきたのは、お子さまクラウドだ。こいつは昔から飛び蹴りが得意技なのだ。

 もちろん、喰らうはずがない。すんでの所で食い止め、ガキの足首を掴んで逆さ吊りにしてやる。オレ様相手に、飛び蹴り決めようなんざ10年早い。

「ぎゃーっ! 放せ、セフィのバカ〜ッ! 今回のは不可抗力だろ〜ッ! いちいち怒んなよ、大人げないな〜!」

「ケッ、逆さ吊りにされてまで刃向かうたァ、いい度胸だ」

「なんだよ、下ろせよ!頭に血が昇るだろ!」

 金髪チョコボは、足を縛られた七面鳥のようにバタバタと暴れた。

「そうだな。もともと悪い頭がさらに悪くなるかもな!」

「ヴィンセントの前でバカにすんなよ!アホセフィ!」

「ああ、ほら、ふたりとも、もうやめたまえ。ラグナさん、もう大丈夫ですから……」

「だってェ〜、セフィが睨んでいるもの〜」

「こいつは地顔だ!悪かったな!」

 だんだんアホらしくなり、オレはクラウドを傍らのソファに放り投げると、居間から外に出た。自室で頭と身体をクールダウンだ。

「セ、セフィロス……」

 間抜けにも部屋までくっついてきたのは、もちろんお人好しのヴィンセントだ。泣き出しそうなツラは、きっとオレが機嫌を損ねたままだと不安になってのことだろう。

「セフィロス……セフィロス……あ、あの……す、すまない……」

「…………」

「すまない……どうか機嫌を……」

「……シャワーを浴びる。出て行け」

 部屋の中までくっついてきたヴィンセントに冷たく言い放つ。完全に八つ当たりだと頭では理解しているものの、途中で放置されたままの肉体の火照りが苛立ちを煽るのだ。しかも目の前の相手はヴィンセント。『ホンモノ』のほうなのだ。

「早く行け!」

「……セ、セフィロス……あ、あの……」

「言っただろう。ボケラグナの電話に、いいところを邪魔されたんだ。これ以上側に寄ったら何をするかわからんぞ、このお人好し」

「…………ッ」

 ヴィンセントは怯えた面持ちで後ずさりする。

「す、すまない……し、失敬した……」

 何とか絞り出すようにそれだけ言い置き、彼は足早に部屋から出て行った。当然だろう、あんなふうに脅したんだ。

「ああ、くそっ!」

 脱いだシャツをソファに叩き付ける。

 クソラグナ……あの疫病神め〜〜っ!!