うらしまリターンズ
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
 
 ヤズー
 

 

 

 

 

 

「強くて……真面目で誠実で、とても優しく思いやりのある人だと聞いている。あの子は……『クラウド』は本当に君のことが好きなのだなと……そう感じた」

 静かだが確信を持ったヴィンセントの言葉に、さすがのレオンも恐縮したらしい。

「い、いや……俺は……そんなに立派な人間ではないが」

 取り繕う言葉を見つけるのに困惑している。

 ああ、いや、あくまでも『困惑しているように見えた』ということだ。レオンという人物はもうひとりの『クラウド』が言ったように、鉄壁の無表情であったのだ。

 しかし亀の甲より年の功。(等と言っては失礼だが)

 レオンよりも年長のヴィンセントは、他人への讃辞に不自由のある人ではなかった。

 やわらかい微笑を浮かべ、言葉を続ける。

「……多少でも言葉を交わせば、人と為りは見えてくるものだ。君は真摯で誠実だ」

「あまり誉めないでくれ。困惑する」

 ヴィンセントとレオンの会話は……なんというか物静かな者同士の会話というカンジで、場が静まりかえってしまう。空気が停滞するとでもいえばいいのだろうか。

 だが、今は状況判断が先であった。

 

 

 

   

「で、ところでさァ、今回のコレはどういうことなんだろうね? なにか、心当たりある? レオン」

 セフィロスが茶々を入れる前に、先を征して俺は口を開いた。

「いや……心あたりは……ああ、どうなのだろう……あの場所……? いや……」

 ひとりで考えの中に沈むようにボソボソとつぶやいた。

「話してみろ」

 セフィロスが促す。

「……ああ、俺の……俺と『クラウド』の居るところは『ホロウバスティオン』という場所だ。現在、治安はあまりよくないのだが……」

「ああ、あのハートレスとかノーバディとかいう化け物の話?」

「そうだ……それから、13機関。……『クラウド』に話を聞いていたのか」

「まぁね。そっちの世界の兄さんが、初めてここにやってきたとき、辿々しく話してくれたよ。正直、俺たちにはよくわからなかったけど」

 俺はそう説明した。

 

「俺の記憶が途絶えたのは、ホロウバスティオン城の中でだ。いつものように、あそこで人捜しをしていたのだが……」

「人捜し?」

「あ、いや……まぁ、事情があってな」

 レオンは言葉を濁した。

「……そこを歩き回っているうちに……意識がはっきりしなくなって、気が付いたらあの海岸にいた」

「なにか強い衝撃を受けたり……こう……特別なことはなかったのだろうか?」

 ヴィンセントが親身になって質問する。

「いや……思い当たらない。いつもどおり……本当にいつもどおりに、研究室を探り……寝室を確認し……いろいろ歩き回ったことだけは確かなのだが」

「……君の捜し人が関わっているということは考えられない?」

「……え……あ……いや……それは……ないだろう……と思う。わざわざこんな手の込んだ真似をする必要はなかろうし……」

「ふぅん、不思議な話。でも危なかったね。あの日差しだもの。日射病起こしていてもおかしくなかったよ」

「ああ、助かった」

 俺は軽く話をそらせた。レオンが、それ以上『捜し人』について、追求されたくなさそうだったからだ。

 

「一刻も早く戻らなければ……」

 レオンがひっそりとつぶやく。初めて見た切羽詰まったような深刻な面持ちだった。

「……まぁ、何から何まで今すぐでなくてかまわんだろ」

 セフィロスがそんな風に言った。彼にしてはずいぶんと気遣いのあるセリフだ。

「そうだな……君も疲れているだろうし。ああ、いけない。今すぐ着替えを……」

 あわててヴィンセントが立ち上がった。

 レオンは湯上がりにローブを引っかけたままの格好で話をしていたのだった。南国独特の気候のせいか、俺たちはやや鈍感になってしまっているのかもしれない。

 

「すまない……迷惑を掛ける」

「そんなこと、全然気にしないで。俺たちもう友人でしょう? それに君の『クラウド』がやってきたときのほうが大変だったよ。借りてきた猫みたいにビクビクしてね」

「ヤズー……そんな言い方は…… 繊細な子だったから、ひどく不安だったようだ。宥めて落ち着かせるのにずいぶんと時間が掛かった。……申し訳ない」

 なぜか謝罪の言葉を付け加えるのが、いかにもヴィンセントらしかった。

「いや……ヴィンセントさんは気を使い過ぎる。だが……ありがとう」

 レオンが低くそう答えた。穏やかな声音だ。ヴィンセントの血の気のない頬が、ポッと上気したのが印象的だった。

 

「あ……そ、そうだ……着替え着替え……ええと、私の服で……」

 アタフタと取りに行こうとするヴィンセント。

「ちょっと無理でしょ、ヴィンセント。身長は同じくらいだろうけど、ヴィンセント、細いからね。俺の服でよければ貸すけど、あまりイメージじゃないかなァ」

「そうだな、おまえのはお色気エロエロだものな。おい、ヴィンセント、オレの部屋から適当に見繕ってやれ」

 ごく当たり前のように、ヴィンセントにそう命じるセフィロス。図々しいことこの上ないが、ヴィンセントは彼の好意に安堵したのか、いそいそと居間を辞したのであった。