〜 MEMORY'S 〜
〜神羅カンパニー・シリーズ〜
<4>
 
 ザックス・フェア
 

 

 



 

 

19:00

 

 そろそろ夕食の時間だ。

 結局昼間の騒動は、実習終了前に席を外した担当教官の責務ということで、俺は無罪放免であった。

 ……そりゃ当然だろっての。

 

 一応、セフィロスにも伝えておこうかと、彼の私室をノックしてみたが返答はなかった。どうやら不在らしい。

「おいおい、まさかまだクラウドにひっついてるんじゃねーだろーな……」

 ため息混じりに寮に戻ろうと踵を返したとき、ソルジャー1stのジェネシスとすれ違った。

 神羅のもうひとりの英雄……<G>……ジェネシス。

 俺と目があって、不思議な微笑を浮かべる。この人もなんつーか、ワケわからん色気があって、対応に困る。片耳のピアスが怜悧な美貌によく似合っていた。

 どうもナルシストっぽい雰囲気が苦手なんだが、声くらいは掛けるべきだろう。

 ……だが、俺が口を開く前に、ジェネシスは、彼独特の色っぽい流し目で、低くささやいた。

「……セフィロス? 『反省室』。」

 と。

 俺がセフィロスの部屋を、ノックしていたのを見たのだろう。

「あ……どーも」

 つい無愛想に受け応えた俺に、ジェネシスは、フフ……と鼻で笑った。それは嫌みにも取れるし、ただの会話の終わりに笑っただけにも見えた。

 反省室かァ〜……

 あー、いや、『反省室』っていう部屋があるわけではない。

 俺たちがそう呼んでいる場所があるってだけで……

 

 

 

19:30

 

 その後、気は進まなかったが、俺は一応、『反省室』に足を運んだ。

 ソルジャー統括部の会議室だ。その中でも小さめな端っこの部屋……

 

 あーあー、声が聞こえる。

 ラザードとアンジールだ。

 人事統括部の長である、イヤミのラザードはまだしも……気の毒にアンジール。面倒見のいい彼は、いつでもこうして厄介事を抱え込んでしまう。

 気難し屋のセフィロスや、きまぐれなジェネシスを、どうにかフォローして事なきを得ているのは彼の存在抜きではあり得ない。

 ……ぶっちゃけ、影の英雄は彼なんじゃないかと思えるのだが。

 

 そうそう。

 実はソルジャーになってから、俺の面倒を見てくれたのはアンジールなのだ。

 面倒をみるとはいっても、なにも日常的な細かな事だけではない。モチベーションの保ち方や、身の置き方(スタンスっていうのかな?)など、ソルジャーとしての自覚を構築する手伝いをしてくれたのが、アンジールだ。

 俺の最も尊敬する先輩といったら、間違いなく彼の名を挙げたいと思っている。

 

 

 

19:45

 

 説教タイムがいつから始まったのかは知らないが、どうにもまだまだ終わる気配がない。

 俺にとってはどうでもいいことなんだが……さっきちょっと部屋に寄ったとき、同室のクラウドが意気消沈していたのが可哀想で……って、俺も、大分、クラウドには甘いみたいだ。

 セフィロスがもうちょっと、周囲の目を気にしてくれりゃいいんだけどな。彼の場合、誰にはばかる必要がある!?っていう、いかにも『英雄』的な考え方だから。

 クラウド本人が、特別扱いを嫌がる素振りを見せ始めて、ようやく、多少自重するようになったのだ。

 ……あくまでも『多少』だが。

 今日みたいに、クラウドが怪我をしたとか、そういう事態に直面すると、一挙にタガが外れるらしい。

 

 

 

19:50

 

『……まぁまぁ、今回は特に大きな騒動にはならなかったわけだし』

 壁に耳をくっつけると低い声が聞こえてきた。

 落ち着いた穏やかな声は、アンジールのものだ。多分、むっつりとふてくされたセフィロスを庇っての発言だろう。

『セフィロスの行動も、上官としての心配からだと考えられるし……』

 苦しい……!

 苦しいぞ、アンジール!!

 上官としての、じゃねー。『恋人』だ、恋人。

 

『いや……まぁ、あの……彼にとってもずっと多忙だったところの休暇なのだから……』

 ずっと多忙なのはアンタだろ、アンジールゥゥゥゥ!!(泣)

 面倒見のいいアンジールは、後輩ばかりではなく、別セクションのお偉方からも頼りにされがちなのだ。

 タークスみたいな特殊部隊や、ルーファウス神羅副社長の取り巻き連中からも、いろいろと頼まれ事を引き受けている。

 セフィロスならば、「面倒くさい」で一蹴してしまう用件も、出来る限り相手の立場を考えて、協力してやる人なのだ。

 

 

 

20:00

 

 僅かな間隙の後、超不機嫌な声が扉の向こう側から聞こえた。

『……腹が減った』

 ふて腐れきった、低い声はもちろんセフィロスだ。

 そして、その後のラザードの叱責と、アンジールのとりなしの声。

 セフィロス……あの男は……どうして……こう…… 

 アンジール……アンタ、人が良すぎるよ……

 

 まぁ、とりあえず、今日の説教タイムはこれにてお開きだろう。

 騒ぎを起こしたとはいえ、負傷した修習生を保護したという名目も立つであろうし、なんといっても『英雄・セフィロス』なのだ。上層部も注意の仕方に苦慮するところだろう。

 それに今回は、彼の行動によって、なんらかのトラブルが発生したわけではなかった。

 

 俺は足音を立てないよう、そっと扉から離れ、そのまま部屋に戻った。

 もちろん、クラウドに教えてやるために。