〜 修習生・研修旅行 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<13>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 太陽が西に傾く頃、俺たち含め修習生一行はキャンプ場所へ到着した。

 『キャンプ場所』とはいっても、頂上周辺のただの平らな場所という程度のところだ。もちろん山だから、どこであろうと多少なりの傾斜はあるし、居心地のよい場所ではない。

 だが、こういった場所で、休息をとれるようテントを張るのも、訓練のうちなのだ。

 ……多少気になるのが天候……山の天気は変わりやすいのは周知なのだが……

 今朝方は暑いほどに晴れ上がっていたのに、徐々に空気が湿り気を帯びてきている。

 

「ええと、オウレン草と……こっちはどくだみ……」

「クラウド、とりあえずテントを先に張ろうぜ」

「う、うん、そうだね。ねぇ、これお水に浸けておいたほうがいい?」

「大丈夫だと思うが……一応そうしておくか。ルーネス、空いてるカップかなんか……」

「あ、あるよ。これ使って」

 

 どこの班もここからが真剣勝負。

 わたわたとテントを張り、夕食の準備……は、さておき、摘んできた薬草を仕込み始めた。のんびり飯を食う気になれないのかもしれないが、ちゃんと食べなきゃ明日まで保たないのに。

 今回は血止め薬と解熱鎮痛剤という、比較的ポピュラーな課題で、使える薬草の候補にも幾種類かはある。だが、ものによっては、事前に燻しておいた方がよいもの、細かく砕いて煮出す必要があるもの、直前に煎じた方が効き目のよいものなど多種多様だ。

 まずは自分たちの入手したそれらが、どういった製法に向いているのかを調べねばならない。

 もちろん、質問されれば出来る範囲での手助けは有りだが、クラウドらが言っていたように、やはり自分たちの手でやり遂げてこその実習なのだ。

 俺たち、付き添いのソルジャーは、遠くから見守るだけで、敢えて現場の彼らに口出しをするつもりはなかった。

 

「あー、暇。退屈だぜ〜」

 そろそろ肌寒くなる草縁に、寝転がっていた俺。その横にドスンと同僚のカムランが座った。

「実習の付き添いなんてそんなモンだろ」

 と俺は応じた。気を利かせて持ってきてくれたビールを、ありがたく受け取る。

「ま、俺らも昔やったよなぁ」

「そうそう。けっこう忘れてることも多いけどな」

 そういうと、ヤツも同感だったのだろう。

「まったくだなァ」

 と、やや呆れ気味に頷いた。

「あぁ〜、でもよォ、ここんとこドタバタしてたから、いい息抜きになったワ。ラザード人事統括に感謝って感じだな」

「ハハハ、なんか、おまえ、そんな感じだな。四月に修習生が同室になってから、イロイロと巻き込まれてるみたいだし」

 そういってヤツは笑った。

「いや、別にクラウドが悪いんじゃねーよ。あいつはいつでも一生懸命ですっごくいい子だ」

「ああ、悪い悪い、わかってるよ。クラウドがどうこうっていうんじゃなくって」

 すぐにカムランは発言を訂正してくれた。カムランとクラウドは社食で会う程度の顔見知りの仲だが、先輩ソルジャーのコイツから見ても、クラウドはまじめで可愛い修習生には見えるのだろう。

「クラウドがっていうより、クラウドを取り巻く人々が騒々しいよな」 

 やや控えめな発言をした彼に、俺は真っ向から本音をぶつけた。

「連中が騒々しいって……そんな可愛いもんじゃねーだろ、カムラン。最悪なのはセフィロスだよ、なんだよアレ? クソ我が儘でデカクて、野獣みたいな野郎で……」

「ぎゃははは!ファンクラブに殺されるぞ、ザックス」

「野郎の本性を知らずに、ファンクラブなんかに入っていられる連中がうらやましいよ」

 ケッと悪態を吐いて俺はごろりと寝返りを打った。

「セフィロスなぁ。なんかいろいろ噂があるみたいだけどな」

「クラウドがらみのか?」

 ふたたび、ごろりと寝返りを打って、カムランのほうに身体を向ける。常に俺が心配しているのはまさしくそのことなのだ。

「あー、まぁな。でもみんなあの子はいい子だと思っているから。悪い言い方をするヤツはいないよ」

「まぁな……」

「同級生とも上手くやってるみたいだしよ。仮に陰口をたたく連中が居たとしても、ただの嫉妬みてーなもんだろ」

「……嫉妬だろうと何だろうと、セフィロスのせいでクラウドがつらい思いをするのは許せん」

 そう言いきった俺に、同僚にして親友の彼は、ひょいと眉を持ち上げた。

「また入れ込んだモンだな、ザックス」

「別にそんなんじゃねーけどよ」

「ふぅん」

「だってよ、クラウドはただまじめに、一生懸命ソルジャーになろうと努力しているだけだろ。セフィロスのことだって、ただ憧れているだけで……」

 まだ確認もしていないが……やはりまずは憧れの感情あってのことだと思う。

「そうか〜。じゃあ、一方的に英雄に好かれちゃっただけなんだな」

「まぁ、そういうこった。縁あってのルームメイトだし、俺は親友だって思ってる。だから、クラウドが理不尽につらい目に遭うのは見てらんねーんだよ」

 そこまでいうと、俺はよいしょいっと起き直った。

 いつの間にか薄闇から、濃い夜のとばりが降りてきていた。

「あー、もう、すっかり夜じゃね? カムラン、飯食おうぜ」

 俺は大きく伸びをし、のんびりと同僚のソルジャーに声をかけたのであった。

 移ろいやすい天候は気にしていたが、雨が降り出すことはなかった。