〜 研修旅行 その後 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<17>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

「ところでさ、セフィロス」

 ジェネシスがクスクスと忍び笑いをしながら、ヤツに話し掛けた。

 セフィロスは目線だけで、面倒くさそうに『何だ?』と聞き返す。

「おまえ、ルーファウス副社長のところに行って、何をするつもりだったんだ?」

「…………」

「ずいぶんと決死の覚悟だったじゃないか?」

「……たりめーだろ、クラウドのことだ」

 ようやくそう答えると、ちょっと間を置いた。さらに言葉を続けようか否か、迷う風情であった。

「それで?」

 と、遠慮無く先を促すのはジェネシス。

「……ルーファウスに取引を持ちかけるつもりだった」

 セフィロスはこの上なく無愛想につぶやいた。多分、くわしく話したくはなかったのだろう。だが結果的にクラウドを救ったのは、ジェネシスの機転だ。

 それゆえ、筋は通すと……そう考えてのことなのだろう。

「取引?」

「テメーが言ったんだろ。あの坊ちゃんがオレに気があると」

「そうだよ。……というか、おまえだって知らなかったわけじゃないだろう? あれほどあからさまな態度だったんだから」

 ひょいと両手を広げた気障なポーズを取るジェネシス。だが、それがちっとも嫌みに見えないのがキャラクターのなせる技なのだろう。 

「…………」

「取引って、まさか愛人ペット契約じゃないだろうな? アッハッハッ!」

「お、おい、ジェネシス、よせよ!」

 いつ拳が飛んでくるんじゃないかとビクビクの俺。ジェネシスはおかまいなしに面白がっている。

「他に何も思いつかなかった。……もちろん、期限付きでだがな。あいつは財力も権力も持っている。ありきたりの取引にゃ応じねェだろ」

「ア、アンタ……マジでそんなこと考えてたのかよ? ほ、本気で……?」 

 喘ぎつつ、俺はセフィロスに確認した。

 ヤツはチッと舌打ちし、

「クラウドのためなら仕方がないだろう。……幸い、オレはまだあの子に気持ちを告げたわけではないし。テメェらがよけいなことバラさなきゃ、負い目を背負うこともない」

 と、応えたのだった。

 意表を突かれた思いだった。いくらクラウドのことを好きだとか愛しているだのと言っていても、まさか自分の身と引き替えにまでしようとは……

 それにルーファウスと本当にそんな関係になったら、あっという間に関係者に知られることだろう。もちろんクラウドだって例外でない。

 つまり、ルーファウスにこの取引を持ちかけるという事は、セフィロスがクラウドを、いったんはあきらめる決心をするのが前提にあってのことなのだ。

「セフィロス……アンタ……」

 なんと言えばいいのか。

 クラウドの親友という立場からなら、そこまで親身になってくれたセフィロスに『ありがとう』というべきか。

 それとも愛人契約だのというブッ飛んだ発想に突っ込むべきだろうか。

 いや、ルーファウス相手なら、的の外れた取引だとはいえない。むしろ副社長が、セフィロスの申し出を受ける可能性のほうがずっと高いのだから。

 

 

 

 

 

 

 呆けたまま突っ立っていると、セフィロスが勢いよく立ち上がり、ぐんと俺の胸元を掴み上げた。

「……おいテメェ……このことは絶対にクラウドに言うなよ……? もし万一、バレるようなことがあったら……」

「ゲホッ! は、放せよ! 言うかよ! 言わねぇよ!」

 そう言い返すと、セフィロスは乱暴に振り放した。

「こらこら、よせよ、セフィロス。まったくおまえも素直じゃないなぁ。本当はザックスと俺に礼を言いたいんだろう?」

「なッ……」

「ザックス、おまえもおまえだ。セフィロスがそこまで犠牲を払ってでも、チョコボっ子を救おうとしていることに感動した……違うか? もっと素直に言葉にしろよ」

「ちょっ……」

 俺とセフィロスは、ほとんど同時にジェネシスを睨み付けていた。しかし強心臓のジェネシスは意にも介さない。

「やれやれ、ふたりとも意地っ張りなんだからなァ。まぁいいさ。セフィロス、貸し一つだぞ。俺と女神の恋も応援してくれよな」

「女神……? なにを言ってんだ、貴様は?」

 ニブルへイムの地下室での出来事など、キレイさっぱり忘れているセフィロスであった……