〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<6>
 ザックス・フェア
 

 

「なぁ、クラウド……」

「ん、なぁに? あ、デザートに、桃のシャーベット食べていい?」

「え? ああ、なんでも好きなの食え。でも、腹、冷やすなよ」

 そう言ってから、ひとつ吐息し、言葉を続ける。

 食事が終わったら、すぐに泳ぎに行く予定だったが、クラウドは食べるのが遅いから、まだ腹がこなれていないだろう。おまけにデザートもしっかり食べるというのだから、もうしばらくは席から動けない。

「……あのよ、変なこと聞くけど」

「なに?」

 屈託のない表情で聞き返してくる。そりゃそーだよな。ついこの前までニブルヘイムの片田舎で、ティファちゃんとじゃれあって育ってきた、素朴な子供だったんだから。

「クラウド…… 最近、セフィロスと会ってるか?」

「え? セフィロスさん?……うん、ほら、社食でいっしょに御飯食べたりとか」

 キョトンとした様子で素直に頷く。

「っていうか、たいていザックスも一緒にいるじゃない。セフィロスさんがどうかしたの?」

「あー、いや、別に…… その……」

「なんなの、ザックス。はっきりしないなぁ。あ、きたきた!」

 すぐに桃のシャーベットに夢中になってしまうクラウド。

 ……きっと、俺の言いたいことなんて、これっぽっちも予想できないんだろうなぁ。

「あー、おまえさ。セフィロスのこと、どうだ?」

「? どうだ?って何が?」

「あー、だから、どう思っているのかってことだ。ほら、おまえ入社式の後に言ってたじゃないか。セフィロスにあこがれて、ソルジャー目指してるって」

 いきなり核心に触れぬよう、外堀から埋めてゆく俺。

 ……なに、こんなに気ィ使ってんだろ、あんな野郎相手に。

「うん、そう。てへへへ。やっぱり、セフィロスさんって、本当にすごいなぁと思う。合宿のとき、おれのこと助けてくれたでしょう? イングスやルーネスに聞いたけど、到底、無傷で済むような高さじゃなかったって。今こうしていられるのも、セフィロスさんのおかげだよ。とっても感謝してる」

 クラウドは大きな瞳を見開いて、しみじみとそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

「あー、うん、まぁ、そうだなぁ。セフィロスには感謝感謝……だよな」

「うん! あ、で、でもね。おれ、ザックスが心配して一晩中探してくれたって聞いて、本当に嬉しかったし、なんていけないことをしてしまったんだろうって……そう思った。合宿から帰ってきても、なんとかおれの処分を軽くしてやりたいって、動き回ってくれたって」

「だ、だれから、そんな話、聞いたんだよ……」

 例の後日談の一件は、クラウド本人には一切告げていなかったのだ。

 恩に着せる気持ちなどさらさらなかったし、とにかく重い処分が降りなかったという事実だけで、俺は大満足だったのだから。

「あ、あの…… 言っちゃダメだって言われてたんだけど…… その……ジェネシスさんが教えてくれたの。ザックスとセフィロスさんが、とても心配して、いろいろと動き回ってくれたって……」

 うっかり口止めされたことを口走ってしまったせいだろう。クラウドは言いにくそうに、もぐもぐと言葉をのみこんだ。

 

 しかしジェネシス…… 何なんだよ、あの人は。

 俺とセフィロスが大騒ぎして焦りまくったってのは事実だけど、実質的にもっとも効果的に動いたのはジェネシス本人じゃねーか。

 つながりのあるマスコミ動かしたり、写真のコラージュ作ったり、それをまことしやかに、号外としてミッドガルで流布させるなど、到底俺の頭じゃ考えつかなかった。セフィロスもしかりだろう。

 それなのに…… 本当に分からないヤツだ、あのジェネシスという男は。

 

「それで? どうしたの、ザックス?」

「え、あ……」

「なんか、真面目な顔で聞いてくるから、何かと思ったじゃん。話しってそれだけ?」

「あ、い、いや…… その……ええと……ほ、ほら、アレだ!」

「……?」

「いや、おまえがさ。例の合宿以降、ちゃんとセフィロスとも話しができるようになっただろう? 以前は緊張してガチガチだったみたいだけど、ずいぶん楽しそうに話しているように見える」

「うん。もちろん、今もやっぱし緊張はするけど、お話するの、とっても楽しいの」

「……そうか。そうだよな」

「ザックス?」

「いや……ほらさ。もともとおまえはあいつにあこがれて神羅に入社したって聞いたからさ。そのセフィロスとフツーに話しができるようになったんなら、もう、俺なんて、用済みかなぁ……とかよ」

「ザックス……!!」

 クラウドは、細くて綺麗な形の眉を、きりきりとつり上げて、キツイ声音で俺の名を呼んだ。

「ザックス! 何なの?何、言ってるの? セフィロスさんと親しくさせてもらえるのは本当に光栄だし、素敵なことだと思うけど、それとザックスのこととは全然別じゃない!」

「お、おい、大きな声出すなよ。いや、そんな、怒るなって……」

「ザックスが馬鹿なこというからでしょ!? 何なの、用済みって……」

 ぐしゃっとクラウドは顔を歪めた。

 ヤバイ! 泣き出す!!

「い、いや、悪い。俺が悪かった!言い方がよくなかったな!」

「ザックスは……ザックスは、ずっと側に居てくんなきゃヤダ…… ザックスが居てくれたから、おれ……ようやく、いろいろなことできるようになったし……ここでの生活にも慣れてこれたのに……」

「な、泣くな! 違うんだよ、そういう意味じゃなくて……」

「ねぇ、ザックス、どっか行っちゃうの!? 転勤とかなの? どうして急に用済みだなんて言うんだよ!?」

 覆い被せるように言いつのられて、俺は返事に困惑した。