〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<7>
 ザックス・フェア
 

 

「ち、違う、違う! この話はもう終わりな! 転勤命令なんて出てないし、ずっと側に居るよ!」

 周囲の非難がましい眼差しに、肩を縮こませながら俺はさらに言葉を付け足した。

 ……それほど人は多くないが、客が俺たちふたりというわけではない。

 グジグジとベソをかきだしたクラウドに気付いて、いかにも

『ひど〜い!』

 という視線を寄越してくる女性たちがいる。

 たぶん、俺がクラウドを泣かせているように見えるのだろう。

 まだ男の体格になりきっていないクラウドは、今日のような私服になると、ボーイッシュな少女に見えなくもないのだ。

 下手をしたら、せっかくのデートで彼女を泣かせる不実な男と目されているかも知れないのだ!

「ほ、ほら、クラウド、泣きやめって! 違うんだよ、つまんない話して悪かった」

「だって……ザックスが悲しいこと言うんだもん……」

 ようやく落ち着いてきたのか、鼻水をすすり上げて彼は低くつぶやいた。

「ザックス、どっか行っちゃわないでね? おれ、がんばってソルジャーになるから。一生懸命努力するから。ちゃんと見てて……」

「ク、クラウド……」

 いかん!

 俺まで涙腺を緩ませてどうするんだ!

 だが、そんなふうに自分の気持ちを伝えてくれるクラウドを、すごく可愛く感じてしまうのはどうにも致し方がなかった。

 もちろんセフィロスみたいな感情とはまるきり違うけど、やっぱり弟分として、こいつがしっかりするまでは側に付いていてやりたい。

 

 ようやく納得してくれたのか、クラウドは、手洗いで顔を拭いてくると言って、席を立った。

 未だにキツイ目線を寄越してくる、周囲の女の人たちに、

『仲直りしましたよ〜』的なお愛想笑いを振りまき、俺は氷の溶けてしまったグラスをぐいっと空けた。

 フーッと大きく息を吐き出す。

 まずったまずった……いくら、セフィロスのことを話そうとしても、アプローチを誤ってしまっては無意味になる。

「は〜…… 参った……疲れた……」

 そんなふうにつぶやいたとき、いきなり背後から強烈なラリアートをかまされたのだ。

 

 

 

 

 

 

「グハッ!!」

 あわやといったところで、椅子から転げ落ちそうになった。

 この太い腕……

 ソルジャークラス2ndである俺を、弾き飛ばすほどの腕力……

 衆目の場で、こんなとんでもないことをしでかす輩はひとりしかいない。

 

「ザックス〜! てめェ〜! くぉぉのぉぉやぁぁろぉぉぉ〜ッ!!」

「ぐっ……ぐおぉぉぉ!」

 いきなり襟首を締め上げられて、俺はガチョウのようなうめき声を上げてしまった。

 っていうか、人目が〜ッ!!

「ゲホッ! グホッ! は、放せ……放せよ! このクソ迷惑な英雄がーッ!!」

 俺は渾身の力を振り絞って、セフィロスを突き飛ばした。

 その拍子にようやく首に回されていた腕が外れた。

「ゲホッ……ゴホッ…… こ、殺す気かよ……! だいたい何でアンタがここに……!」

「後を付けてきたに決まってんだろ!」

 ストーカー行為を、堂々と言ってのけるセフィロス。そういや、クラウドがちょこちょこ後ろを振り返っていたっけ。

「何なんだよ、アンタは…… もうちょっと常識的な行動を……」

「あ〜あ、ザックスに注意されちゃったねェ、セフィロス。だから、無茶なことはするなと言ったじゃないか。アッハッハッ」

 聞き慣れたのんびり声が飛んできて、俺は風を切って、背後を振り返った。

「ジェ、ジェネシス! ア、アンタまで……!」

「いや、別に俺はそんなつもりじゃなくてさ。セフィロスがおまえたちを追うと言ったから、付いてきたまでだよ」

「だったら止めろよ……」

 心底脱力して俺はつぶやいた。いや、ほとんど呻き声になっていたと思う。

「おい、テメェ、ザックス! 貴様、調子に乗ってんじゃねーぞ!」

 地獄の獄卒のような眼差しで、ガンをつけてくるセフィロス。

 何なんだよ…… 別に調子に乗ってなんか……

「……クラウドは単に同じ部屋にいるから、側に居て欲しいと言っているだけで、決してオレ様と比較してどうのってんじゃねーんだからな!」

「おい、ほら、セフィロス。そろそろチョコボッ子が戻ってくるぞ。姿を見られるのは本意ではないのだろう?」

「チッ……運のいい野郎だ! いいか、ザックス! 貴様はあくまでもルームメイトだ! ほんのちょっぴりオレ様より幸運だっただけだ!」

「ほらほら、セフィロス! 向こうに行こう」

「おまえらの会話はすべて筒抜けだからな。生きてソルジャークラス1stに昇進したいのなら、つまんねェ真似はすんじゃねェぞ……!」

「こらこら、セフィロス。ザックスに凄んでも無意味だろ。彼はごく自然にあの子と親しくなっただけなんだから」

「だから、そいつは同室という幸運が理由だと説明してやってんだろ、この愚図によ!」

「いいから、ほら、ほら! ザックス、ごめんよ、邪魔をしたね。今日はチョコボッ子とのデートを楽しんでくれ」

「なにがデートだ! 勘違いするんじゃねぇぞ!!」

 喚き散らすセフィロスを、ずるずると引っ張ってゆくジェネシス。

 ……何がデートだよ。そんなつもりは全然ないっつーの!!