〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<25>
 ジェネシス
 

 

 

「偉いぞ、セフィロス、よくやったな!」

「……まぁ、訳ありだったようだが、君の働きのおかげで、罪のない民間人と、幼い修習生の命が救われた。その点については十分評価に値するのだが……」

「ラザード! こんなときくらい、素直にセフィロスを誉めてやってくれ! 勤務時間外だというのに、たったひとりでテロリストから人々を守ったのだ!」

「アンジール…… いや、だが、それには懇意にしている修習生が……」

「俺はセフィロスの心の成長が嬉しい! もう何年もの付き合いになるが、こんなふうに立派に……」

「おめーら、うるせーんだよ。部屋から出て行け」

 天然と陰険の愉快な漫才を遮ると、セフィロスは心の底から鬱陶しげに言い放った。

 ここはメディカルセンターの病棟の一室だ。検査の結果に緊急性は見られなかったが、軽い怪我ではない。医師の薦めもあり、傷が完全にふさがるまではこちらで療養という運びになったのだ。

 

「暑苦しいテメーらのツラなんざ見ていたら、治る怪我も治らん。さっさと消えろ」

 上官に当たる統括のラザードと、年長のアンジール相手でも、セフィロスは言いたい放題だ。

「まぁまぁ、セフィロス。彼らはおまえのことをずっと心配してくれていたんだぞ」

「別に頼んでねェ」

「そういうことをいうもんじゃない。だいたいメディカルセンターに入院した当日にでも、俺たちは見舞いに行きたかったのに! ジェネシスに面会謝絶と言われて、どれほど焦ったことか!」

 暑苦しいの代名詞、正義感の強いアンジールが、ずいと顔を突き出してセフィロスに説教をかます。

「殴られて腫れてるみっともねーツラ晒せってのか!?」

「みっともなくなどない! 傷は男の勲章だ!」

 力強く宣うアンジールに、さらになにか言い返そうとするセフィロスであったが、やがて深いため息を一つ吐き、そっと開けかけた口を閉じたのであった。

「ああ、まぁまぁ、アンジール。ほら、ラザードも。精密検査の結果にも問題はなかったし、お見舞いはもう十分だよ」

 いつでもその独特な対応に苦慮させられる……だが、人間性は俺などより、ずっと上質のふたりに声を掛けた。

 あの事件が片付いたのはすでに、夜半を回っていたから、今日はまだ、負傷をした『翌日』という数えになる。

 それにも関わらず、セフィロスは、

「クソッ! 口の傷に滲みる」

 と、文句を言いながらも、三度の食事はしっかりとっていたし、足りないとおかわりまでする快復具合であった。

 

 

 

 

 

 

「そういうジェネシス。君もそろそろ執務室に戻ってくれないかね? 調書の内容で訊ねたいことがあるのだが」

 くいと銀縁メガネを押し上げながら、ソルジャー統括のラザードが言った。

 彼は悪い人間でないが、やや堅物だ。一分の隙もないスーツ姿が、たいそう様になっている。まるで生まれたときからその格好をしていたかのように。

「俺はその場に居合わせたわけじゃないからね。あれ以上くわしいことについては書けないよ、ラザード」

「だが、カンパニーの修習生が同席していたのだろう。その経緯とか、戦闘中の彼の行動とか……」

「経緯についてはどうでもいいことだろう。知っての通り、執務時間終了後のことだし、あの子だって、エデュケーションスクールを抜け出したわけじゃない。きちんと授業を終えた後の話だ」

「それはそうだが……」

 理はこちらにある。いくらラザードが統括という立場であっても、これ以上は追求できまい。

「では、テロリストに遭遇した後のことだが……民間人を退去させる際に……」

「クラウドはテロリストに殴られたんだッ! このオレを庇おうとしてだ!」

 ラザードの物言いを勢いよく遮り、セフィロスが狼のごとく吠えた。怪我をしているというのに……これぞまさしく手負いの銀色狼といったところか。

「『セフィロスさんを放せ!』って、あの可愛い声で叫んで、豆柴みたいに身体をよじってな……」

「豆柴はかわいいな。俺も好きだ」

 どうでもいい相づちを打つアンジールを黙殺して、さらにセフィロスは声を強めた。

「そんなあの子に怪我をさせてしまったのは、一生の不覚だ……! 責任をとって、一生側に居てやらなくては……」

「話の流れ、おかしくなってるぞ、セフィロス。……いずれにせよ、ラザード、勤務時間外のプライベートタイムに、運悪くテロリスト集団に遭遇してしまったが、ソルジャークラス1stセフィロスの活躍で、事なきを得た……そういうことさ。俺の出した調書に文句つけられるヤツなんていないと思うけど?」

 腕組みしてそう言ってやると、ラザードはヤレヤレと言った様子で両手をバンザイした。

「……わかった、ジェネシス。上には上手く話をしておこう。面倒くさい副社長がなにか言ってきたら協力してくれたまえよ」

「もちろん、了解しているよ。俺は君の味方だからね、ラザード統括」

 そうこたえると、彼はセフィロスへのあいさつもそこそこに部屋から出て行った。