〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<29>
 セフィロス
 

 

 

 

「セフィロスさん、どっか痛いところはありませんか? して欲しいことはないですか!?」

 マンガならば、バックに『キリッ!』と効果音が入りそうな口調で、クラウドが訊ねてくる。もともとはおっとりゆっくりな子なのだが、今は何故か使命感に燃えている雰囲気だ。

「いいから、ここに座っていろ、クラウド。ほら、顔を見せろ。口元の傷はどうだ? まだ赤みが残っているな……」

「い、いいえ、おれは何ともありません! ただでさえ、足手まといになってしまって……」

「言っただろう? そんなことを気にするな。おまえは神羅の修習生として、最後まで気丈に頑張ったではないか」

「セフィロスさんは……いつでもおれにやさしすぎます」

 目を伏せたクラウドの表情から、ついオレはあれこれと考えてしまう。

 ルーファウスのボケナスが、何か嫌みでも言いに行ったのではないか。ジェネシスのバカタレがつまらない差し出口をきいたのではないか。それとも、クソハリネズミが、もうオレの側に行くのをやめろとか……

 

「セフィロスさん?」

 と呼びかけられて、意識を目の前のこの子に戻す。

 いけない、クラウドといられる貴重な時間。どうでもいい野郎共のことを考えるのはよそう。

 

 予定とは大分異なってしまったが、ふたりきりの密室というシチュエーションなのだ。

 これを好機ととらえずして、なんといおう。

 

 

 

 

 

 

「クラウド。話があるのだが」

「ハイ! うわあ……お菓子がいっぱい!」

 メディカルセンターとはいえ、VIPルーム扱いの病室だ。

 面会謝絶とはいっても、看護師を通して見舞いの品を贈ってくる輩は多い。テーブルだのサイドデスクだのは、ほとんどその品で埋まっている状態である。

「何でもお前の好きな物を持って行け。それよりも……こっちへ。側に来てくれ」

 そう促した自分の声が微かに揺れているのに気付く。

 ……こんなことは初めてだ。

 あたりまえだが、玄人相手とはまるきり違う。

 ……恋というのはこういうものなのか。

  たかが、気持ちを告げるだけのことで、こんなにも緊張を強いられるものなのか。

 戦場でのミッションでさえ、これほど『手に汗握る』経験をしたことはない。

 

「ハイ、セフィロスさん。何かご用でしょうか?」

「そこに掛けてくれ。そのほうが話がしやすい」

「……? ハイ」

 クラウドは少し不思議そうに小首をかしげた。まだ成長期のこの子の場合は、本当に『小首』なのだ。

 彼は言われたとおり、寝台の傍らのスツールに腰を下ろしてくれた。

「なんでしょうか?」

 大きな蒼い瞳で、じっとオレを見つめる。

 

「クラウド、その……」

「あ、セフィロスさん! 横にならないのなら、ガウンを掛けた方がいいです!風邪引いちゃいます!」

 クラウドは、少年らしい機敏さで、椅子に引っかけっぱなしだった上着を手に取った。

 上半身裸のオレの肩にそっと掛けてくれた。たいして意識はしていなかったが、素っ裸で包帯をぐるぐるに巻き付けている今のオレは、正視に耐えなかったのかもしれない。

「あ、ああ。すまん」

「いいえッ! 何かおシゴトはありませんか? おれでも出来ることなら…… あ、お茶とか淹れましょうか!?」

「いや……いい。その……ここに来て、顔を見せてくれ」

 オレはやっとの思いでそう頼んだ。クラウドから、ヒシヒシと役に立ちたいというオーラが感じられる。じっと椅子に座っているのが、落ち着かぬと言う様子なのだ。

「あ、は、はい。お話があるんですよね。すみません、おれ……」

「事件の日からずっと気になっていた。すぐにでもおまえの様子を見に行きたかったのだが、医者どもに阻まれてな」

「そ、そんな……あたりまえです。セフィロスさんのほうが、ずっとひどい怪我をしていたんですから」

 きゅっと小動物のように、身体を縮こまらせてクラウドがつぶやいた。