〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<4>
 ジェネシス
 

 

 

「チョコボっ子はどうしてる?」

 彼の憂慮の原因を、ストレートに訊ねた。

「ああ、毎日授業があるからよ。その辺はちゃんとやってるみたいだ」

「そうか。セフィロスの告白が原因で、研修に身が入らないとなると、さすがにまずいだろうからね」

「クラウドも、もう子供じゃない。今、一番しなければならないことを頑張ってるんだ」

 ザックスは彼の代理とでもいうように、力強くそう言った。

「けっこう、けっこう。そういったところは、しっかりした子だ。母上を見ればわかる」

 偶然にもニブルヘイムの村で出逢った、チョコボっ子の母。

 美しいハニーブロンドが、彼とそっくりだった。

 父親は早くに亡くなったと彼が言っていたら、クラウド少年は母一人、子一人で育ってきたのだろう。

 やや内気なところも、ひとりっこで母親に守られて育ったせいかもしれない。

 『身内』になると、素直に甘えてくるというのも頷ける。

 

「その母親だって、男に告白されたって聞いたらひっくり返るだろ」

 ザックスの言葉に気を取り直す。

 どうしてもニブルヘイムのことを考えると、最終的には女神の面影が浮かんでくる。意識を強引に現実世界へ引き戻さねばならない。

「……まぁ、俺たち三人の印象は悪くないと思うけど……」

「それとこれとは話が別だぜ」

「……フフ、それはそうだけどね。……ところでザックス、何か用事があったんじゃないのか? わざわざおまえの方から声をかけてくるなんてめずらしいじゃないか」

『もちろん、普段からそうしてくれれば嬉しいんだけどね』

 と、俺は付け加えた。

「いや……別に用ってわけじゃ……」

「そうかい。それなら尚のこと結構」

「ああ、もう茶化すなよッ! ……なぁ、アンタはセフィロスの病室に出入りしてんだろ?」

 ようやく本題に入ったということなのか、まるで腫れ物に触るように容態を訊ねてきた。

 

「ああ、もちろん。今朝も寄ってきたところだ。ご機嫌斜めだったけど、傷はもうほとんど治っちゃってるよ」

「……化けモンだな、あのオッサン……」

 呆れたようにザックスがつぶやいた。

「なんだ、知らなかったのか? おまえは顔を出してないの? アンジールだって就業時間後には毎日、様子見に行ってるぞ」

「……俺はソルジャーっつっても、クラス違うし、VIP仕様の病室なんか落ち着かねェしよ」

 ぼそぼそと言い訳をした。

「フフ、ザックスらしくもない。俺たちは皆友人だろう?」

「そーゆーコト言うのはオメーくらいのもんだ」

 セフィロスの物言いを真似たつもりか、ザックスは困惑混じりの笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「いや……顔合わせたら、絶対、クラウドのこと聞かれるだろ? 知ったこっちゃないっいんだけどよ……でも……」

 口ごもるザックスに、俺はうんうんと頷いた。

「なるほどね。ザックスはセフィロスのことが心配なんだね」

「なんでそういう話になるんだよ」

 憮然とした表情で突っ込んでくる。

 図星をつかれたとき、人はこんなふうに座った目をするものだ。

「だって、そうだろう? チョコボっ子は、あの日以来、一度も病室に顔を見せていない。研修生ってだけで日々忙しいところに、唐突な事件が発生してとっちらかしているだけだ」

「ジェ、ジェネシス……」

「本人は決してセフィロスをないがしろにするつもりはないのだろうが、今はどんな顔をして見舞いに行けばいいのかわからない、というところかなぁ」

 頭に自然に浮かび出てくる情景を、そのまま口にしたのだがほぼ間違いないと見て良いだろう。

 その証拠に、ザックスはがっくりと肩を落とし、溜め息を吐く。

「だよなぁ〜……」

 と、同意したのであった。

 そしてそのまま言葉を続ける。

 

「なぁ、セフィロス、機嫌斜めって言ってたけど、どんなカンジ?」

「もちろん、病室への訪問がなくなったクラウド少年を想って、鬱々としている。案外、アイツ、恋愛慣れしていないんだ。これまでは玄人相手ばかりだったからな」

 男女を問わず、セフィロスは素人にちょっかいを出すような真似はしなかった。彼の初めての性体験は十代半ば足らずであろうが、その時から『面倒ゴトは避けたい』という態度であった。

 もっとも、これまでの間、彼のお眼鏡に適う人物との出逢いがなかったとも言える。

 とにもかくにも、立派に成人し、英雄と呼ばれるほどになってから……

 今さら初恋……! しかも、少年に本気の恋をするとは。

「ったく参ったぜ。医者から部屋に戻っていいって言われてるくせに、クラウドのためだけに大嫌いな病棟に残ってるなんざ……」

「なぁんだ。ザックス、病室に顔を出してきたんじゃないか?」

「違げーよ。看護師さんの立ち話をちょっと耳にしたんだ。彼女たちはセフィロスに退院して欲しくないみたいだったけどな」

「やるなぁ、セフィロス。興味のない人間には笑顔一つ見せないクセに」

 アンジールや俺など、付き合いの長い相手には、時折笑みを浮かべることはあっても、後輩はもちろん、上役に対しても、完全に無関心なのだ。

 そしてその『興味のない連中』に、ルーファウス神羅も入っているわけである。