〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<5>
 ジェネシス
 

 

 

「それで?とっちらかってるチョコボっ子は脈有りっぽいかい? それとも怖がってる?」

 ずばり真相を尋ねる。

 本人に聞いても無意味だろう。

 まだまだ俺は、『身外』という認識だ。ザックスに対するような、甘えた態度は見せない。

「……告られた日、クラウドのヤツ、顔真っ赤にして、走って戻ってきたんだ」

 寮の自室にということだろう。

 チョコボっ子とザックスは同室で生活している。

「『セフィロスさんが、おれのこと好きだって。恋愛感情だって』ってさ。はぁはぁ息切らせながら、どうしよう〜って、ベッドに頭突きしてたぜ」

「ふむ、今度ばかりは、あのおっとりした子にも、セフィロスの真剣さが伝わったってコトかな」

「伝わったから、あんなに暴れてたんだろ。アンタのいうとおり、二三日はひたすら部屋で悶えてたな」

 ハァとザックスが、疲れたように溜め息を吐き出した。

「あぁ、やっぱりねェ。……脈あり、かな」

「なんで!? どうして!? 今の話だけで、そんな解釈になるんだよ!」

「本当に嫌なら、チョコボっ子はおまえにそう言うよ。そもそも神羅に入社した動機が、セフィロスに憧れてだ。オマケに同世代の子よりも幼い」

「幼いなら、よけい……」

「そう、幼いから、未だに性体験がない。というよりも、恋愛自体をしたことがないんじゃないかな。ティファちゃんへの思いは、どちらかというと親愛の情だ」

 きっぱりと俺はそう言った。

 

 ニブルヘイムの思い出は、なにも女神のことだけではない。

 クラウド少年の母上、そして約束を交わした幼なじみの女の子。

 ザックスとセフィロスと、三人で飲んで、二日酔いになったことなど……ああ、楽しかったなぁ。

 是非また三人で行きたいものだ。ああ、いや、今度はチョコボっ子も一緒にか。

 

 

 

 

 

 

「話の途中で遠い目すんなよ。キモチワルイだろ」

「いや……ティファちゃんの話をしていたら、ニブルヘイムの女神を思い出してね。美しい眠り姫に恋をしてしまった俺から見たら、セフィロスもチョコボっ子も大いに羨ましいね。クラウド少年はともかく、セフィロスは好きな相手が、身近に居る状況なんだからさ」

 半ば本音でそう言ってやると、ザックスはわずかに目を見開いた。

「アンタ……あの棺桶の中の人のこと……本気でかよ?」

「心外だね、ザックス。彼を想わない日はあれから一日たりとも無いよ。すべてを放り出して、彼を抱きしめながら永久の眠りにつきたいと……今朝も、本気でそう考えた」

「おい! おいおいおいおい! やめてくれよッ! そ、そんな非現実的な……! セフィロスがあんな状態で、アンタまで居なくなったら…… そうだ! だったら、あの黒髪の人をここに運んでくればいいだろ!? 神羅本社のメディカルセンターや科学研究部門の人たちに頼めば……」

「よしてくれ」

 ぴしゃりとザックスの言葉を遮った。

「あの美しい人の身体を、科学者連中が撫でくり回すと考えただけで吐き気がする……おぞましい!おまえとセフィロスは特別だから、紹介してやろうと思っただけだ」

「そんな撫でくり……ってよ。ヤラシー言い方すんなよ」

「だが、事実だろう? あの人にこの薄汚れた世の中を見せたくない。ましてや、こんなゴテゴテとした大袈裟なビルの……それも実験動物のように、衆目に晒すなんて……耐えられないッ」

 本当に嘔吐しそうになり、俺は残った紅茶を一気に飲み干した。

 

「そんなつもりじゃ……ただ、アンタがそこまで想っているなら……ってよ」

 ザックスがぽつりとつぶやいた。

「……すまない。おまえの言葉に他意がないことはわかっている。でも、俺のことを少しでも考えてくれるのなら、地下室の彼のことは誰にも言わないでくれ。万一、本社に漏れたら……」

「わかった、わかったよ。アンタがそれでいいなら絶対秘密は守るよ。でも、セフィロスにも話してんだろ? どっから漏れるかわかんねーぞ」

 今度はそんな風に心配してくれる。

 ザックスはとても男気のある素直な青年だ。カタブツのアンジールが可愛がる理由がわかる。

「大丈夫。セフィロスは口止めなんてしなくても、すっかり女神のことは忘れているよ。チョコボっ子のことで頭がいっぱいだからね」

「ああ、今はな。だが……」

 

 ザックスが言いかけたところで、俺の携帯が鳴った。プライベートと使い分けしている、神羅本社から支給されたものだ。

 

「すまん、ザックス、緊急出動要請だ。……ラザードのところへ行ってくる」

 俺は早口でそう告げた。

 

 嫌な予感がする。

 またゲリラが何かしたのだろうか。

 あの時……クラウド少年を庇って負傷し、傷だらけでぐったりと横たわったセフィロスの姿を思い起こす。

「緊急出動ってことは、この近くで何かあったのか? 俺も行く!」

 後を付いてくるザックスを、わざわざ止める言われもない。

 統括はすでに編成を組んでいて、それのとりまとめに俺を呼んだのだ。

 

 こうして、ソルジャーにはソルジャーの、修習生には修習生の、それぞれの仕事がある。恋愛にうつつを抜かしているヒマは……ある。

 

 ……どれほど過酷な状況にあろうと、人は誰かに恋をするものなのだ。