〜 ムンプスウイルス 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<11>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

 セフィロス! 今、皆の前で本心を口にするのは得策じゃねーぞ! なんとか適当にごまかしておくんだ! 未だ、クラウドにアンタの気持ちを告げてもいないんだからな!

 一応、いままでのアンタの抗弁は曲がりなりにも筋は通っている。だから、そのセンで押していって……そう、仕事とプライベートは別とかなんとか、そーゆーヤツ!  クラウドに言及しなくても、この場は収められるだろう!!それで最後まで通せ!

「言っただろう。オレがこの子を気に入っているからだ」

「あ、そう、そうなんスよ。ちっこいけど、見所のある後輩だなって、俺もセフィロスも……」

「ソルジャー2nd・ザックス、つまり、君もセフィロスもそこの修習生を後輩として気に入っていると、そういう理由だというのか?」

「そうッスよ、もちろん。!そうなんス! そりゃぁ、アレ、副社長から見ればどうして今年入社の修習生にって思うかもしんないスけど、同じ部屋で寝起きしてりゃ、仲良くもなるし、その……」

「そうだな。君については私にも理解できる。同室の先輩ということでな。君自身もそれほど、そこの修習生と年が離れているわけではないし」

 あ、ヤベ! そ、そーいうんじゃなくて……その……

「オレ様の気持ちと、そこのハリネズミのしみったれた友情を一緒にすんな」

 クソ偉そうに言ってのけたのは、英雄本人であった。

 ヒ・デ・オ〜〜っ!! いや、誰がアンタのためにフォローしてると思ってんの? 空気読めよ。クラウド本人の預かり知らぬところで、テメーの思いを第三者に先に知られるのは、後々まずいんじゃ……

「オレのは愛情であり、『恋』だ」

 ヤツは何の躊躇もなく、面と向かってルーファウスに告げた。言い淀みもせずにだ。

 しかも『恋』とか言ってんな! 聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃねーか!

 ……あ〜、コレ、ニブルヘイムのティファちゃんのときと同じパターンじゃねーか。ホント、この人は後先考えず……

「愛情と恋情はまた違うんだぞ、わかっているのか、セフィロス?」

 などと明後日の質問をするのはジェネシス。この際、ヤツの発言は黙殺だ。

「……ハッ、またきまぐれな君の遊び相手か? だが、修習生は君に憧れて入社した者も多いはずだ。少し相手をしてポイではその子が可哀想だぞ」

「その心配は無用だ。この子が最後の相手だからな」

 シ……ンと場が静まり返る。ツォンもすぐさまフォローには入れないらしく、困惑し切った面もちで口元を押さえている。……たぶん、ヤツには予想がついてはいたのだろうけど。

「……冗談はやめたまえ、セフィロス。君とその子ではまったく釣り合いがとれない」

 冷ややかにルーファウス副社長が言った。

 生まれながらにして大企業の後継者としての身分を持つ『権力者』の物言いであった。……そして、多分、セフィロスが一番嫌う態度なんだと思う。

「そいつを決めるのは当事者のオレとクラウドだ。他人の意見は関係ない」

 案の定、そう言い返したセフィロスの声音は、先ほど以上に鋭く、また冷淡であった。

「…………」

「もっとも、まだクラウドにオレの気持ちを告白していないし、その結果、この子がオレを受け入れてくれるかはわからん。……自信はあるがな」

「マジで?」

 思わずそう言ったら、裏拳で顔面を殴られた。鼻血が出るだろ、コノヤロー!

「……君は本気で言っているのか? 我が社の誇るトップソルジャーの君が? この入社したばかりの少年に特別な感情を持っていると!?」

 副社長の言葉が徐々に熱を帯びてくる。語尾が上擦った調子に持ち上がり、感情のかけらが迸る。

「さきほどからそう言っている。オレはこの子を好いている。その気持ちは何人たりとも異議を唱えることは許さん」

「まぁ、アレ、チョコボのお母さんぐらいだよね〜、異議唱えられるのは」

「おい、ちょっ……ジェネシス!」

「だが、さっきも言ったとおり、オレはまだこの子に本心を告げてはいない。入社したばかりの少年が、ようやく周囲の環境に慣れつつある今、クラウドによけいな負担を掛けないためだ」

 あの……それ、俺が忠告したセリフそのまんまですよね?なんか……偉そうに宣ってますけど。いかにも自分で配慮したっぽい感じで。

「それにな。オレがこの子を求めることで、心無い賢しらな連中がクラウドを悪くいうかもしれない。……貴様のような野郎のことだ、ルーファウス神羅!」

「セフィロス! いいかげんにしないかッ!」

 怒鳴ったのはツォンだった。さすがに黙って聞いてはいられなかったのだろう。

 俺は背後のベッドで横になっているクラウドが気になってしかたがなかったが、ツォンをたしなめることはできなかった。……彼の気持ちはわかるから。ツォンはルーファウスを子供の頃からずっと側に着いて守っている。いや、母親を早くに亡くし、父親など不在も同様の彼を、ここまで育てたのはツォンだと言っても過言ではないのだ。

 一応カーテンで間仕切りした背後のベッドを、ちらりと一瞥し、目線を前に戻した。ジェネシスも眠っているクラウドが気になっていたらしく、前を向き直すとき目が合った。

「何だ、腰巾着。何か文句があるのか?」

 あくまでも挑戦的な態度を崩さないのはセフィロスだ。

「……ルーファウス副社長を侮辱するのは許さない。君の気持ちに言及するつもりはないが、私としては、これ以上君に、ルーファウス様を関わらせたくないとさえ思っている」

「ツォン!?」

 尻上がりに声を上げたのは副社長本人であった。

「ツォン、おまえ……何を言って……」

「申し訳ありません。ですが、私はあなたを侮辱する人物に謙るつもりはありません。またそのような人間と深く関わって欲しくはないのです」

「ツォン……」

「あー、結構、結構。いいじゃねーか。その男のいうとおりだ、ルーファウス神羅。オレのことなど放っておけ。貴様にはいくらでも取り巻きはいるだろう?」

 形のよい唇を皮肉げに歪めてセフィロスが嘲う。この男は本当にクソ意地悪い物言いをする。

 別に俺は副社長の味方ではないが、この場に居ると、さすがに同情を禁じ得ない気分になった。