〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<5>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

「えー、いいなァ、ザックスばっかズルイ〜!!」

 クラウドはベッドの上でじたばたと暴れた。

「いや、あの全然そんなカンジじゃないから。もう、ホント……アレ……」

「だってェ〜。旅行行くんでしょー? 任務じゃないんでしょ〜? いいなァ」

「ああ、なんかみやげ買ってきてやっから。……俺が生きて帰れたらな」

 駄々を捏ねるクラウドを横目に、古びたボストンバッグに適当に荷物をつめる。とにかく一刻も早く出なければ!というその一念のみで。

「もぉ〜、昨日までは何にも言ってなかったくせに〜。ねぇねぇ、どこ行くの〜?」

「いや……そりゃおまえ……」

 言えるかよッ!!

 セフィロス追ってニブルヘイムだなんて……しかもその目的がティファちゃんを救うためだなんて、口が裂けても言えないっつーの!!

「まぁ、アレだよ。最近ちょい疲れ気味だったから……そこらでマッタリと……」

「なにそれ〜。ザックス、おじさんくさいよ?」

 もう、ホント何とでも言ってくれ、クラウド。

 すまねェ、マジすまねェ!!

 俺が迂闊な発言をしたばかりに……だが、この命に代えてでも、おまえの幼なじみは助けるからな!!

 そうとも! 例え、セフィロスと刺し違えてでも、巨乳は守るから、コレ。

 

 コンコン!!

 

 ちょうどそのとき、扉を叩く音がした。

 クラウドの友だちあたりが、ノートでも借りにきたか?

 いや、むしろ、今は彼の相手をしてくれる人物が居てくれた方がありがたい。どうしても良心が疼いてつらいのだ。

「ほれ、クラウド、客だぞ」

「はーい、開いてます〜」

 そういいながら、ドアを開けに行くクラウド。

 部屋の中はお世辞にもキレイとは言えないが、野郎同士なんざどこも似たり寄ったりのはずだ。

 

 

 

 

 

 

「こんばんわ。ザックス、仕度できたか?」

 ……え? 俺……?

 ってゆーか、なんで?

 なんで、ここにジェネシスが来てんの!?

 しかも、デカイ旅行用バッグ持って……

 

「やぁ、元気そうだね」

 愛想良くクラウドに微笑みかけるジェネシス。

「ジェ、ジェネシスさん?」

「チョコボの子はご機嫌いかがかな?」

「ク、クラウドです!」

「そうそう、クラウドだった」

 無感情でありながらも、表面はにこにこと笑いながら、彼の金の髪を撫でる。

「ジェ、ジェ、ジェネシスッ!? なんで、アンタが……!!」

「はははは。面白そうだから一緒に行くことにした」

 いや、あの面白そうだからって……アンタ……

「な、何、いきなり言いだしてんだよッ!!  だいたいアンタ、休暇申請だって……」

「さっき出して来た〜」

「さっきって……そんなん……」

「ラザードの部屋に置いてきたよ。さぁ、行こう、ザックス」

 ごく当然のように俺を促すジェネシス。

「いや、置いてきたって、アンタ……」

「大丈夫、大丈夫。アンジールがいれば大抵のことは問題ないよ」

 ……そりゃそうかもしれないけどね。

 俺が今回の休暇もぎ取るのだって、すんげー大変だったのに、1stのジェネシスまで姿を消したらパニックになるんじゃねーの?

 まぁ、この人はそこまで考えて行動する人じゃないのかもしれないけど。

「ほら、急げよ、ザックス」

「いや……さすがにヤバイだろ、ジェネシス…… 置いてきたって……ただデスクの上に放置してきただけじゃねーだろうな?」

「ううん。統括室もう閉まってたから」

「え……? じゃあ……?」

「私室のドアの前に置いてきた」

 放置じゃん!! それ『置いてきた』とかじゃねーだろっ!?

 完全な放置じゃねーか。ドアの前って……廊下だろ? 廊下に置いてきたって言ってるよ、この人……

 まだドアの隙間に挟んできたセフィロスのほうがマシなんじゃねーの!?

 コイツ、カンペキに確信犯だよっ!!

 

「早くしてよ、ザックス。鞄重いんだからさ」

「い、いやいやいや! まずいって、ジェネシス。それはもうちょっと……人として……」

「人としてマズイのは、おまえの方じゃないのか、ザックス? なぁ、金髪チョコボくん?」

 キョトンとした面もちで俺たちを眺めるクラウド。

 やばい! クラウドにだけは俺たちの目的を知られるわけにはいかねーんだ!!

「わかった! わかったからッ! じゃ、じゃな!クラウド! おみやげ買ってくるからな!!」

「ふふふ、じゃあ……クラウド。チョコボサブレ買ってきて上げるから」

「は、はぁ……行ってらっしゃい……」

 毒気を抜かれたように手を振るクラウド。

 すまねェ……ホントにすまねェ。この埋め合わせはするからな!!

「さ、じゃあ、行こうか、ザックス。急がないと彼に追いつけないよ」

 いけしゃあしゃあと宣う、面白好きの詩人。

 

 ふと、殺意が芽生えた満月の夜であった……