〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<6>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

「へぇぇ……なるほどね、そういうコトだったのかァ。あっはっはっ」

 飛行機の窓から、外を眺めつつジェネシスが笑った。

「なんだよ、アンタ、知らなかったわけじゃねーだろ。こうやって俺を脅して同行してきたんだから!」

「脅すなんて人聞きが悪いなァ、ザックス。ただ俺は面白そうだったから一緒に行きたかっただけだよ」

「面白そうって……アンタな!! 下手したら血を見るかもしれねーんだぞ!! っつーか、アホセフィロスは、完全に殺る気満々で行ってるに違いねェ…… ああ、ティファちゃん、無事でいてくれ!!」

 思わず両手を組み合わせ、神に祈る。

 フライト中は、それくらいしか出来ることがないのだ。気ばかり焦って、胃が痛くなりそうだ。

「……しかし、セフィロスは、ずいぶんとチョコボくんを気に入ったようだね。まぁ、確かに可愛らしい子だとは思うけど」

「知るかよ…… クラウドはまだガキだし、男なんだぞ。それを……」

「まぁまぁ、ザックス。同性愛に偏見があるのかもしれないけど、それはやや偏狭なんじゃないか?」

 小説片手に反論してくるジェネシス。変態紅コートにそう言われても説得力ねーんだよ。

「なに? アンタも男のほうがいい人? ケッ……世の中乱れてるぜ」

「俺? 俺は……そうだなァ。女神がいいな」

「あー、そうですか、はいはい」

「話を振ったのはおまえのくせに。失敬だなァ、はっはっはっ」

 クソックソッ! 

 今はつまんねー戯れ言に付き合う精神的余裕はねーんだよ。

 こうしている間にでも、かわいい巨乳のティファちゃんが、銀髪野獣の手にかかって……

「大丈夫だよ、ザックス」

「え?」

 俺の心を見透かしたように、ジェネシスが声を掛けてきた。

「ニブルヘイムは本当に田舎だから、空港に着いても単線の乗り継ぎになるし。車で行くには遠回りだから、セフィロスも汽車だろ」

「……だからなんだよ?」

 吐き捨てるように俺は言った。だが、ジェネシスはまったく意に介さず、のんびりと続きを話した。

「調べておいたんだけど、その単線も下手をすると一日に数本なんて区間もある。俺たちが順調に進めれば、セフィロスの到着とそう変わらない時刻に着けるはずだよ」

「……マジで?」

「うん。だから、上手く乗り継ぎができるように祈っておこう。セフィロスはせっかちだから、きっとイライラしていることだろうね」

「…………」

「どうした、急に黙って?」

「ジェネシス……その、サンキュ」

「いや、別に」

 どうでもよさそうに彼は返事をした。

 

 

 

 

 

 

    

「ジェネシス、急げーッ!! 早くッ!早くッ!!」

「待ってよ……荷物、重いし……」

「コイツを逃したら、次がいつになるかわかんねーんだよッ!!」

 俺たちは空港に着くと同時に、猛然と駅へダッシュした。

 当然、数時間に一本限りしかない汽車を逃さないためだ。

「俺の方が年上なんだしさァ……労ってくれよ」

「ソルジャー・クラス1stが何言ってんだよッ!! ほら、荷物貸せっ!」

「あー、すまないねェ」

「いいから、とにかく走れーッ!!」

 っつーことで、何とか俺たちは、オンボロ列車に間に合った。

 本当に冗談抜きで、一日三本しか走っていないのだ。これではセフィロスも、どこかで足止めされている可能性が高い。

 鬱で死にそうになっていた俺にも、一筋の光明が見えてきたカンジだ。

 

「やれやれ、間に合った…… ハァァァ」

「気ィ抜くなよ、ジェネシス。まだセフィロスに追いついたわけじゃないんだからな」

 俺は自らに言い聞かせるようにつぶやいた。

「わかってるってば…… やれやれ」

「無理やり着いてくるから、疲れるんだぞ。ったく、アンタって本当にわかんねェ」

「あっはっはっ。いやァ、なんかさァ。ザックスが仲間になってから、いろいろ楽しいことが多いし。今回も一緒に行けば、何か面白いことが起こるんじゃないかなァって」

「俺はソルジャー2ndだ。別にアンタの仲間じゃないだろ」

「同じソルジャーじゃないか。クラスとかあんまり関係ないだろ」

 そう思ってんのはオメーだけだっつーの。

 まぁ、確かにジェネシスは誰に対しても同じような態度だ。2ndであろうと、3rdであろうと、興味があればどんどん近づいてゆく。飽きっぽさも見事なものだが。

 対してセフィロスのほうは、ほとんど下位ソルジャーとの付き合いはない。たぶん、クラウドがらみで俺くらいのものだろう。

 同輩のアンジールやジェネシスとは親交があるようだが……それも『親交』と言えるほどのものではなく、基本的に一匹狼のキャラだ。

 

「ところでチョコボの幼なじみのことだが……」

 ジェネシスが言葉を挟んできた。

「ああ、ティファちゃんな。俺も、ちっこい写真見せてもらっただけだから……本人に会ったことがあるわけじゃないし」

「それなら尚のこと、セフィロスにはわからないんじゃないか?」

「いや、すぐにティファちゃんだとわかる目印がある」

「というと?」

「ティファちゃん、すごい巨乳らしい。クラウドが言ってた」

「あっはっはっ。そうかァ。あの子も男だなァ」

 のんきに笑うジェネシス。

 俺一人でキリキリしていても到着する時間が早まるわけではない。そう考えて、ジェネシスのおしゃべりに付き合うことにした。