〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<12>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

「なぁ、ふたりとも。そろそろ宿に戻らないか? 腹も減ったし、この時間に出歩く人も少ないだろ」

 しばらくしてジェネシスがため息混じりにつぶやいた。

「この時間って、まだ九時過ぎだぞ」

 と、日頃から素行の悪いセフィロスが言う。

「ミッドガルと一緒に考えちゃダメだよ、セフィロス。ほら、もう町が寝静まろうとしている……」

 キショイんだよ、エロ詩人。

 だがまぁ、のどかな田舎町ゆえ、道を歩く人も居ない。

「ティファちゃんは女の子だからな。遅い時間に外をふらつくこともないだろうよ」

「…………」

「さ、行こう、ふたりとも。確かにここには色々揃っているけど、さすがにベッドメイクまではされていないと思うよ?」

 ダイニングに常備されている簡易食をちらりと眺め、好意的にジェネシスが促した。

「チッ……仕方がない。ニブルヘイムに着いたのが遅かったからな!」

「あははは。俺たちも大変だったよ。気のいい駅員のおじさんのおかげで助かったけど。駅からの道がわからなくてさァ……このあたりは本当に田舎なんだなぁ」

「クラウドは美しい自然と、素朴でおおらかな気質の中で育まれたのだな……」

「うん、そうだねェ、チョコボだもんねェ。さ、食事しに行こう。せっかくの休暇なんだから」

 まったく話の噛み合っていない二人だが、どうにか、セフィロスも俺たちと神羅屋敷を引き上げることに同意してくれた。

 ジェネシスの言葉ではないが、まだ夜の九時過ぎだというのに、本当に人通りがない。

 神羅屋敷は町外れにあるのだが、一応そこからは道が続いている。当然村人たちが普通にこの屋敷の前を行き来して生活しているはずなのだが、人っ子一人通らないのだ。

 結局その日、俺たち三人は、ジェネシスが捜しておいたという店で、遅い夕食を取り宿屋に戻った。

 酔っぱらったセフィロスをほろ酔い加減程度の俺とジェネシスでささえ、大きな寝台に放り込む。

 あ〜、同室で無くて良かったぜ〜。

 

 

 

 

 

 

「うぉッ!! ヤベッ!!」

 翌朝……俺は窓から差し込む、明るい日差しに飛び起きた。

 ツインルームの一方のベッドには、未だジェネシスが規則的な呼吸を繰り返している。

「オオイ!! ジェネシス、起きろッ!! ヤベーぞ! もう十時過ぎだッ!!」

「ん〜……」

「起きろったらッ! ええと、セフィロス、セフィロスは……!!」

 俺は慌ててドタバタと廊下に飛び出した。

 俺たち以外に客はいないようだが、少々憚られるくらいの騒々しさだっただろう。

 だが、今はそいつを顧みる余裕などない。セフィロスの部屋は奥のシングルだ。とはいっても、ベッドはダブル並にデカイし、広々とした一番いい部屋らしかった。なんせ、俺たちのツインと広さはまったく変わらなかったのだから。

 ああ、いや、そんなことはどうでもいいのだ!

「おい、セフィロス!! セフィロス!!」

 ドンドンと扉を叩く。

 返事がないことに、腹の奥がじわじわと痛んでくる。

「おいッ! いねーのかよ!!」

 マナー違反だとはわかっているが、俺はドアノブに手を掛けた。すると、呆気なく扉が開く。

「……セフィロス!?」

 いない!!

 いねーよ、コレ!!

 開けっ放しで整理されていないトランク。夕べのシャツは椅子に引っかけたままだ。

 だが、肝心のベッドはもぬけの殻で……

「くそッ……いねェ……」

 なんてヤツだ、あの野郎……!!

 俺たちよりよっぽど深酒していたくせに…… アイツがザルなのは知っていたが、昨夜は疲れもあったせいか、めずらしく酔っぱらっていたのだ。

 ……まさか、あれまでも俺たちを欺く演技……!?

 いや、さすがにそこまでは…… だが、いずれにせよ、セフィロスは既に行動を開始しているに間違いはないのだ!!

 俺は、即座にツインルームにとって返し、未だ、グダグダと寝くさっているジェネシスを、叩き起こした。

「ジェネシス!! ジェネシスッッ!! 起きろよッ!! セフィロス、もういねぇぞ!!」

「ん〜……休暇……なのにィ……」

「いや、もうそれどころじゃないから!! 何のために一緒に来てくれたんだよッ! おらっ 起きやがれ〜ッ!!」

 俺は自分よりも長身の男の腕をとり、力任せに引き起こした。

「ん〜……わかった……わかったってばァ…… ふぁ〜あ……」

 大きく伸びをし、ようやく手間の掛かる英雄の片割れは起きだした。

 ったく、付き添いのオメーが面倒掛けてくれてどうすんだよ!!

「腹が減ったな……ザックス、メシ行こう」

「アンタ、話、聞いてる!? もうセフィロスがいねーんだよ!! メシなんざ食ってる時間ないって!!」

「いや、そんなことはないだろう? セフィロスも多分、下で食事してるんじゃないか? 当然宿が用意してくれているはずだし」

「いいから急げッ! 俺、先に下降りてるぞ!!」

「まったくせわしないなぁ、ザックスは。セフィロスは食事を抜かして行動する人じゃないんだってば」

 ブツブツと口の中で文句を言いつつ、手洗い場に行くジェネシス。おまけにシャワーの音まで聞こえてくる。

 こいつは待っていられないと考え、俺はジェネシスを放置して階段を降りた。

 何が何でもティファちゃんを、セフィロスより先に確保しなければならない!!