〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<13>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

「チッ……うるせーぞ。頭に響く」

「え……」

 階段を降り、玄関口を出ようとしたとき、奥の方から耳慣れた声が飛んできた。

 個々の食堂は入り口から右右手側に、広いスペースで取ってある。泊まり客だけじゃなく、村の者たちも利用できるような造りなのだ。

 声が聞こえてきたのは、その食堂からだ。

「セフィロス!?」

 大慌てでそこを覗き込むと、クソデカイ英雄が奥の席に陣取っていた。

 朝っぱらから豪快に並べられた食事を、片っ端から平らげている。

「大声を出すな。メシを食いに来たなら静かに座らんか、ボケが!」

「……お、おう……」

 促されるままに座席に着くと、気のいいおかみさんが、俺の分のパンとスープ、そしてチーズの塊に、目玉焼き、コンビーフなどの素朴な朝食を持ってきてくれた。

 どれもこれも手の掛からない簡素なものだが、とにかく量が多い。

 飲み物を訊ねられ、ちょっと迷った上でコーヒーではなくカフェオレを頼んだ。

「い、いや……姿が見えねェから……」

「別にてめぇらと一緒に行動する理由はねェだろ」

「そ、そりゃ、そうかもしれないけどよ……だが……」

 そんなやり取りをしている間に、ジェネシスがやってくる。

 クソッ……結局はジェネシスのいったとおりだ。やはり俺よりもセフィロスのことをよくわかっているのだろう。

 同じソルジャー1stで、英雄と呼ばれる二人だが、セフィロスのほうはまったく周囲に無関心で我が道を進む人間だ。対してジェネシスは人間観察が趣味である。

 今回はその辺がアドバンテージだったようだ。

「へぇ、美味そうだな。こういう素朴な食事はいいなァ」

 などと言って、宿屋のおばさんを喜ばせるジェネシスであった。

 さて。

 食事を終えた後、俺たちは連れだって神羅屋敷に赴いた。

 昨夜も言ったことだが、初対面の男3人がいきなり女性の家を訪問するのは不自然だし、偶然を装って会うにしても、村の中を徘徊しているわけにはいかない。

 もちろん、道を歩くのは自由だろうが、十人並みの俺はともかく、セフィロスとジェネシスはひどく目立つのだ。

 ただでさえ、のんびりとした田舎町である。

 その神羅屋敷に向かう道程でさえ、すれ違ったおばちゃんは目を丸くして見ていたし、気のよさそうな農夫は物珍しげに話しかけてくるのだった。

「まぁ、神羅屋敷の窓からなら、村の中が見えるだろ」

 と、のんびりジェネシスがつぶやいた。

「片っ端からそこらの家を訪ねてみりゃ、そのうちブチ当たるだろ」

「アホかっ! 騒ぎを起こすなって昨日言ったろッ!!」

「どうして騒ぎになるんだ。ただ話をしたいと訪ねるだけなのに」

「いっぺん、テメェの格好をじっくり鏡で眺めやがれッ!」

 ったく自覚のない英雄め〜。

 ああ〜、面倒くさいッ!!

「まぁまぁ、せっかくの休暇じゃないか。邪魔も入らないんだし、のんびりしよう。ティファちゃんと話をするのだって、別に何日もかかるわけじゃないんだから、帰るまでに会えればいいじゃないか」

 オメーはのんびり過ぎなんだよ、ジェネシス!!

 

 

 

 

 

 

 昼間やってきた神羅屋敷は、充分に豪華で綺麗に整えられており、むしろ宿屋に居るよりも落ち着くし開放感がある。

 キッチンにはご丁寧に調理器具やら保存食もあることだし、社員である俺たちが食ってもかまわない……かな?

「やれやれ……お茶飲もう。おまえたち、紅茶でいいよな」

「俺、カフェオレ」

「俺はコーヒーな」

 俺、セフィロスの順番で言ってみたが、ジェネシスのヤツは、

「俺は紅茶がいいの」

 といいながら、至極丁寧に、茶葉を吟味し、お湯を沸かした。じゃあ、訊くなっつーの。

 

 さてと……とティーカップが並んだところで、手近な椅子に座る。

 この場所からなら、村の中心部あたりが見通せるのだ。

「うーん、いい香り。やっぱり紅茶はオレンジペコがいいなァ。ダージリンも好きだけどね」

「よくわかんね」

 と、俺。

「おい、おめーら、着いてきたなら窓の外見てろ」

 ブツブツと文句を言うセフィロス。

 村中の家を片っ端から当たるという案は却下され、偶然を装って会おうということになった。なぜなら、ティファちゃんの人物的特徴はクラウドに聞いて知っているし、もっとも騒ぎにならない方法だと思うから。

 十代の元気な女の子(?)なら、頻繁に外出するだろう。その機会を上手く利用しようというのである。

 

 結局まったりと三人でお茶を飲み、しばらく外を眺めていたが、それらしき少女はまだ通らない。すぐに退屈したジェネシスは、

「ちょっと探検してくる」

 などと言って、屋敷のどこかに姿を消した。

「ったく、ジェネシスは当てにならねーな」

「別にあんなヤツいなくていいだろ」

 俺の文句をアッサリと流し、セフィロスはお茶のお代わりを淹れようとしたその時……

 唐突に、屋敷の入り口が開放されたのだ。

「ねぇ、誰か、居るの?」

 

 問いかける高く澄んだ声音に、俺たち二人は同時に立ち上がった。