〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<20>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

「クラウドがオレの気持ちを受け入れてくれたなら、きっと日々が薔薇色に変わるだろう。寝食を共にし、休日は一緒に出掛け……あの子の欲しがる物はそれこそ何でも与えてやりたい」

 軽く頬を染め、ホゥ……と感嘆の吐息をつく英雄。

「いや、あの……先走りすぎ……」

「きっと照れ屋のクラウドは遠慮するだろうが、可愛い子はいくら着飾っても様になるものだ。一日も早くその日を迎えたいな」

「…………」

 小難しい感情論の話が終わったせいだろうか。セフィロスの思考は遙か未来へ飛んでいる様子であった。

「いや、あの……」

「だが……その……そっちの生活に関しては慣れるまでに時間がかかるだろう。女との交渉経験もなかろうし……ふむ……」

「おい、『ふむ』じゃねーだろッ!! めずらしくまともなことを言ったと思えば……」

「あっはっはっ。ふたりとも捕らぬ狸の皮算用だね」

 のんびりと割って入ったのはジェネシスだった。

 白熱しすぎてヤツの存在を忘れていた。気障ったらしく長い足を組み、カッコつけてティーカップを弄んでいる。

「チョコボくんはまだ何にも知らないのにね」

 クスッと小さく笑う。

「なんだと、この野郎!」

「あっはっはっ。俺はセフィロスの味方だよ。チョコボくんと上手く行くといいな」

「たりめーだ!」

 憤慨するセフィロス。

 まぁ……確かに。いくら俺が心配しても、セフィロスが変態妄想してようとも、未だクラウドは何も知らないのだ。だいたいニブルヘイムに俺たち三人が揃っていることなど、夢にも見ぬことだろう……

 しかも何故か、セフィロスVSティファちゃん状況になっているなど……

 そう、よくよく考えれば、当の本人が知らぬところで、こうしてあーでもないこーでもないと妄想するセフィロスや、頭を悩ませている俺などは、ジェネシスから見れば滑稽なピエロそのものに見えたはずだった。

 

 ああ、もう、阿呆らしい。

 セフィロスが軽い気持ちなどではなく、あそこまでクラウドのことを想っていることがわかっただけでよしとしよう。

 ヤツがクラウドに気持ちを告げるか否かは、俺の関知できることではないし、クラウドがセフィロスを受け入れるか断るかも本人たちの問題だ。

 ただ、もし、その結果……クラウドがつらい立場に立たされたとしたら、友人として、同僚として、彼を守っていこう。 

 そう、俺の取るべきスタンスはそれでいいのだ。

 ……って待てよ? これって、なんとな〜く、行きにジェネシスが言っていたのと、同じ結論……?

 椅子に座って未だ、美味そうに茶を啜っているジェネシス。

 そんなヤツの綺麗に整った顔をちらりと眺めると……まるで俺が何を考えていたのかを見越すように、彼はうっすらと微笑んだ。

 ……やりにくいぜ、まったく。

  
 
 
  

 
 
 
  

「ふぁ〜あ、疲れた〜」

 俺は大きく伸びをした。

 なんつーか、今日の午前中だけで、一週間分の疲労を背負った気分であった。

「お腹も空いたしねェ……セフィロス、本当に明日帰るの?」

 ジェネシスが傍らに立つセフィロスに訊ねる。

「当然だろ。もはやここに居る必要はまったく無くなった」

「ゲンキンだよなァ、アンタは。いったいどれほど俺たちが心配して……」

「あっはっはっはっ。心配していたのはザックスだけだろ。俺は大丈夫だと思ってたよ。セフィロスはそんな軽率な行動をとる人間じゃないと知っていたから」

「よし、よく言った、ジェネシス」

 ……よくもまぁ言ってくれるワ。

 ティファちゃんと対峙していたときは一触即発の雰囲気だったくせによ〜……

「まぁ、とりあえず、血を見るようなことにならなくてよかったぜ。おめーらのおかげで、俺サマの寿命は十年近く縮まった……」

「あっはっはっ! さ、じゃあ、宿に引き上げてのんびりしよう。明日は昼前に発てればいいだろう?」

 ジェネシスの言葉に反論する者は誰もいなかった。