〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<21>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 結局、その日は昼食を終えた後、午後はめいめい好きに過ごした。

 夜は晩飯を食った後、三人で酒を飲んだ。それもバーやクラブなんかではなく(そんなものはないが)、適当に酒やつまみを買い出し、部屋に持ち込んで宴会をしたのだ。

 俺たちは別に仲良し三人組ではない。

 いや、ぶっちゃけ、気が合う仲間とはいえないだろう。顔つき会わせれば口論になることも多いし。(ジェネシスだけは自分から仕掛けて来たりはしないが)

 だが、この日はまるで旧知の親友のように、酒を飲み明かし、笑い合った。

 そして何時の間にか、重なるようになって眠り込んでいたのだ。おかげで目覚めたとき、二日酔いの頭痛に加え、身体の節々が痛くてたまらなかった。

 おまけに俺の上にセフィロスが雪崩れ込んでおり、身体を起こすだけで大変だっつーの。こいつはデカクて重いのだ。

 ズキズキと痛む頭を抱え、なんとか立ち上がる。足元がおぼつかないのはまだアルコールが抜けきっていないからだろうか。

 未だ眠り込んでるふたりを置き去りに、湯を浴びに部屋を出た。シャワールームは各部屋に付いているのだが、大浴場が一階の離れにある。せっかくなので、一度くらいはここに入ろうと思ったのだ。

 ちょっと熱めのお湯に身体を浸すと、徐々にアルコールが抜けていった。

「今日帰るのはキッツイなァ〜……」

 空は抜けるように蒼く冴え渡っている。ニブルヘイムはそれほど気温が高くないせか、濃い青色じゃなくて、透明感のある「蒼」なのだ。

 窓辺からのぞけるローカルな景色をぼんやりと見つめていると、脱衣所で声が聞こえた。不意にがらりと扉が開き、部屋に残してきたふたりが入ってきた。

 

「ああ、やっぱりザックスだ。声掛けてくれればいいのに」

 というのはジェネシスのセリフ。セフィロスは無言のまま、頭からシャワーをぶっかけている。

 ……っていうか、ふたりとも。

 とりあえず入って来るときくらい、ちっとはチ○コ隠せや!!

  
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 ブランチといった時間帯に食事を食べに行く。

 今日も、宿屋の心づくしの料理だ。

 メニューは昨日とほとんど変わらないが、どれもこれも、素朴で、素材の味が生きていて、まったく飽きることがないのだ。

 俺的にはミッドガルに並び立つ、小洒落たレストランなんかより、こういう店のほうがずっと好ましい。

「美味いなァ。なかなかミッドガルじゃできないよね、こういう食事は」

 率直に感想を述べたのはジェネシスだ。何を考えているのかわからないポエムを吐くくせに、こういうときには本当に素直に賞賛する。

「パンの味なんかも全然違うな。たぶん、この村で採れたものをそのまま使っているんだろう」

「ザックスもそう思う? 俺の村はリンゴが名物なんだけど、やっぱりパンは美味しかったよ。田舎のほうがこういったものは味わい深い気がするなァ」

 セフィロスは寝不足なのかあまり会話に加わらなかったが、すでに5つ目のパンを食べ終えるところから、いわゆる二日酔い状態でないことだけは証明されていた。

 美味しい朝食を満喫し、そろそろ出発するか……というその時。

 ティーカップを手に、窓辺の景色を楽しんでいたジェネシスが「あれェ?」と声を上げた。相変わらず緊張感のない口調で。

「なんだよ、ジェネシス。食い終わったなら、そろそろ行こうぜ」

「待て、もう一杯コーヒーを飲む」

 と、セフィロス。

「アンタさ、朝っぱらからブラック三杯って、胃に悪すぎない? しかも飲んだ日の翌日に……」

「むしろ酔い覚ましにいいんだ」

「なぁ、ふたりとも……ほら、あそこに居る女人……」

 あまりしつこく言うので、無視を決め込んだセフィロスはともかく俺は一応返事をすることにした。

 ったく地下室の怪人といい、この男は次から次へと……

「なんだよ、ジェネシス」

「ほら、あの女の人だよ。そう、金髪の……」

「……? ああ」

「あの人、さっき、このお店にコーヒー豆買いに来た人だよね」

「はぁ? いちいち気にしてねーっつーの」

 この宿屋はレストランの他に、簡単な食材を取り扱っているのだ。それこそ、俺たちが食べたばかりの、パンや調味料、そしてコーヒー豆に茶葉などだ。

 ジェネシスがいうには、その婦人がさきほど、向かいのカウンターに買い物をしにきた女性だということだ。

「ザックス、彼女のこと見ていなかったの?」

「別にいちいち他人様のツラ、見覚える必要もないだろ。メシ食ってる最中だったし」

「セフィロスも?」

「…………」

 セフィロスなどは無視を決め込んで、渋い顔でコーヒーを啜っている。

 すると、ジェネシスはおもむろにつぶやいたのであった。まるで「砂糖取って」というような日常会話の調子で。

「あの女の人、チョコボのお母さんだよ」